自動車の軽量・小型・低燃費に貢献
今回取り上げるのは、当社初、完全オリジナル設計の超扁平型トルクコンバータ。 このトルクコンバータ(以下TC)は、ジヤトコの小型FF車用CVT「Jatco CVT7 W/R」に搭載され、 東風日産乗用公司が2015年10月に中国市場で発売した新型車「LANNIA(ラニア)」に供給されています。 高精度なプレス技術を最大限に活かして1.6Lクラス世界一の 軽量・小型・低燃費を実現した超扁平型TCの技術を探ります。
Product超扁平型トルクコンバータ
TCはオートマチックトランスミッション(以下AT)を構成する部品の一つで、エンジンの動力を増幅してトランスミッション(以下MT)に伝える駆動系装置です。クルマの性能や燃費、環境性能に大きく影響し、AT・CVTの心臓部とも言われています。そのため各社が低燃費で環境に配慮した軽量・コンパクトなTC開発に凌ぎを削っています。
ドーナツ型のTCは主にインペラー、タービン、ステーターの3つの羽根車、ロックアップクラッチ・ダンパーで構成され、インペラーとフロントカバーを溶接一体化した内部は専用のオイルで満たされています。そして以下の3つの働きをもって、エンジンからの動力をTMに伝達させます。①流体性能:3つの羽根車などを介してオイルの流体力を増幅させ、発進加速のための十分なトルクを得る。②ロックアップ性能:ある一定以上の速度からエンジンとTMを直結(ロックアップ)させ、トルクの伝達ロスを抑えることで燃費を向上させる。③ダンパー性能:ダンパーに内蔵されたバネがエンジンの振動を吸収し、ロックアップによって車体に伝わる音や振動を抑える。
Key Technology1.6Lクラス世界一の軽量・小型・低燃費を実現した設計技術
流体部分の超扁平化とダンパー部の薄型化
「ユニプレス超扁平型トルクコンバータ」は、流体部分の超扁平化およびダンパー部の薄型化により、小型・軽量化に成功。また、「Jatco CVT7 W/R」の発進スリップ制御に対応した新摩擦材の採用および低剛性設計の新開発ダンパーにより、クラス最高レベルのロックアップ性能および軽量化を達成したことで、発進時のダイレクト感や燃費向上に貢献しています。
Achievement ユニプレスの海外初のライン設備導入
海外初のトルクコンバータ製造ライン
独自の精密プレス技術を一層深化させ開発した「ユニプレス超扁平型トルクコンバータ」は、ユニプレスにとって海外初のトルクコンバータの生産となりました。ユニプレス精密広州会社に年間40万台の生産能力を保有するラインを新規に設置。生産ラインは設備のコンパクト化を図り、従来のラインよりも大幅に縮小しました。また、自動化の推進により、安定かつ高品質を実現しました。これにより、将来の増産にも柔軟に対応できるようになりました。
Project Members Voices担当者たちの挑戦
機能開発
小川原亮太
機能評価センター 開発設計担当
※所属部署、役職は2016年8月当時
強度を成立させながら小型・軽量化を実現
1.6L中型車用のTCは仕様提示方式※で初めて手掛けるため、一からの開発。エンジントルクが大きくTCを配置するスペースに制約があるため、強度を成立させた上で部品をどうレイアウトして省スペース化するのか、非常に苦労しました。今まで経験したことのない領域への挑戦ばかりでしたが、オイル流体部分の超扁平化とダンパー部の薄板化により、小型・軽量化に成功。更に、新摩擦材を採用した低剛性設計の新開発のロックアップクラッチ・ダンパー構造により、クラス最高レベルのロックアップ性能や軽量化を実現し、発進時のダイレクト感と燃費向上に大きく貢献しています。
*お客さまが提示した要求性能と寸法のみで部品設計を行うこと
機能評価
菅原淳市
機能評価センター 実験担当
※所属部署、役職は2016年8月当時
現地に実験設備を導入し、品質保証体制を確立
お客さまからの要求スペックを満たすために、設計検討された形状に対しどのような実験を行えば機能保証できるのか、一から考えました。さまざまな検証実験を行い、「この形状とサイズならいける」という図面スペックまで掘り下げて設計にフィードバックを繰り返しました。また、中国で生産するにあたり、現地に流体性能を評価するための実験設備を導入。国内設備と同じ性能結果を出すのに手こずりましたが、ユニプレス精密広州会社のメンバーで実験評価できるよう研修を行い、品質保証体制を確立しています。
生産技術
實石浩平
TM技術開発センター 技術グループ 生産技術担当
※所属部署、役職は2016年8月当時
自動チェック機能で品質・生産性が向上
中国で初めてメイン、サブラインの全ての設備を立ち上げました。これは海外初のTCライン。今まで目視チェックなど人に頼っていた品質保証を、センサーでの自動検知機能を設け、品質の安定化を図りました。一番力を入れたのは部品組み付け。表裏の誤りや2枚重ねなど、一切のミスを起こさないよう、「ポカよけ機能」を設けた装置で自動化しました。結果、事前のさまざまな検討から品質保証が可能となり、生産性向上にもつながり、現在稼動するラインは年間40万台の生産能力を保有しています。